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中日新聞に掲載されました。「御園のタブノキ、復活の芽 急速な衰えも…熱心な手入れ」
2019-12-29
戦災から奇跡的によみがえり、あがめられてきた神木が、名古屋市中区栄二の国道19号沿いにある。御園座の向かいにあり、「御園のタブノキ」の名で知られる。五月末から急速に樹勢が衰えて大半の葉が枯れたが、関係者の献身的な手入れにより、再び新たな芽を伸ばし始めた。専門家は「危機的な状態から、回復の兆しが見え始めた」と驚きつつも、「今後も手を掛け続ける必要があり、油断できない」と話す。

 歩道に立つ常緑樹は、高さ約十メートル、幹回りは約三・八メートル。大きく広がった枝に枯れ葉が目立つものの、幹や枝から鮮やかな緑の芽も出ている。コンクリートに囲まれた街路樹でこれほど大きく成長するのは珍しいという。

 葉が枯れ始めたのは、今年五月末。わずか一カ月ほどで九割近い葉が一気に枯れた。診察した樹木医の西垣直人さん(44)によると、大木が衰退する場合は枝先から徐々に進行するのが一般的で、一カ月で急速に枯れ進むのは異例だ。

 過去には二〇〇五年六月ごろにも、一部の葉が枯れた。西垣さんによると、同年も今年も共通して一~五月に雨が少なく、多くの水を必要とするタブノキの生育に影響した可能性がある。昨夏の猛暑や渇水の影響も考えられるという。

 西垣さんは「地中でよほど大きな変化が起きた可能性」を指摘したが、交通量が多い国道の下の根を診察することは難しい。そのため、薄めた液肥と水を継続的に与えることで、変化を観察することになった。

 水やりは、国道の街路樹の管理を受注している大島造園土木(中区栄一)が担当。夏は社員二人がかりで週一~二日、一回に二千リットルもの水を、根が吸収できるように根元から約四時間かけてゆっくりと与えた。「枯れちゃうの」と心配して尋ねたり、肥料を置いていく近隣住民もいた。

 手入れのおかげか、八月初めには幹から芽が出始め、九月には上部の枝にもたくさんの芽が出た。胴吹きと呼ばれ、木が光合成をしようと葉をつくる現象とみられる。

 今後について、西垣さんは「現状の大きな樹形を維持するのは難しい」と指摘しつつ、「芽がうまく育てば、将来的に樹形が回復していく可能性もある」と話している。

◆推定樹齢250年 戦災乗り越える

 この場所は戦前、1920(大正9)年創業の富永電機社屋と創業者の屋敷があり、タブノキも敷地内にあった。だが、同社に残る文書によると、太平洋戦争末期の44(昭和19)年に軍用道路の拡張のために軍が一帯を接収。名古屋空襲で一帯は焼け野原となり、木も無残に枯れたが、奇跡的に数年後に再び芽を出した。

 推定樹齢は江戸中期からの約250年と伝わる。戦前には木の根元にほこらがあったが、空襲前に現在の富永電機の敷地(中区栄1)に移設。その後、毎年11月27日の同社の創業記念日に神主を招いて神事を行っている。

 4代目の富永浩司社長(63)は「先祖代々の思い入れが強い木で、戦後も無残な枯れ木から復活したと聞いている。なんとか復活してほしい」と願う。

 神木として、現在も近隣ビル関係者が毎年末、幹にしめ縄を巻いている。今年は26日、ビル関係者がしめ縄を新調した。

 (豊田直也)

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